先週末に、とある夜道で路面に大きな穴(アスファルトがえぐれた跡)に気付かずFバンパーを嫌と言うほど打ち付けました。その後しばらくは口から魂が抜けかけてしまうと共に何であんなところに穴が…と凹みまくったものの、気落ちしようが漫画のように患部へ手を当てようが割れてしまったバンパーは元には戻りません。しかも割れた長さは30cmほどにもなるので『無かった事に』と目を瞑って乗るわけにもいかず。
人生は選択肢の連続だ、とばかりに無い頭で色々な対応策を絞り出してみるとこんな感じになりました。
①速攻で修理工場へ入れて奇麗に直してもらう。
②奮発して新品の純正バンパーにDで付け替えてもらう。
③オークションなどで中古の純正バンパーを見つけて持ち込みで取り付けしてもらう。
④自分でなんとかする。
⑤以前のエントリーで紹介したSUBARUのWRX S4の納期を早める。
⑥これを機に違った中古のメルセデスに換えてしまう。
⑦己の手から気を放ち、傷口を回復させる。
自分の財布と相談し、自分のスキルとも相談した結果として今回は④の自分でなんとかするに落ち着きました。尤も、私のメルセデスさんは何かの際に立ち寄ったレクサスで下取りの値段を『20諭吉』と宣告されているため、ここに大金を叩いてバンパーと言う消耗品を直すことに躊躇してしまったことと、『今日なら出来る気がする』と果てしない勘違いで敢行した結果は以下の通りとなりました。
まずは患部のご紹介。
痛々しいです、バンパーにデザインされた彫り目に沿ってパックリ割れています。底面も塗装が剥がれてしまいました。
ちょっと拡大。重力で完全に割れ目が開いてしまっておりますね。これを直して参ります。
さて、ここで簡単にどうやって直すかを考えます。純正バンパーの素材はよくPPと略されていまして、これはプロポリレンと言うらしいです。これは皆さんご存知のように曲げや押しに強いことから少しだけぶつけたくらいなら平気なケースもありますよね。この長所の裏には基本的に『補修に不向き』と言う唯一にして最大の短所があります。FRPと違って一般的な接着剤が使用出来ず(すぐに剥がれてしまう)パテを盛ることも難しいとネットの諸先輩方が紹介していました。
このためPPバンパーを補修で直すには『溶接』となります。あ、もちろんハンダではありません。元々が一体形成で仕上がっている純正バンパーなので、割れてしまった面通しを溶かしてくっつけてしまうのです。イメージとしては真っ二つになった板チョコの断面を湯煎して溶かした上で再接着するみたいな。そうすることで素材が再結成して強度も出るのだそうな。
行程としては3つのみ。
①バンパーをはずす。
②患部を修理する。
③バンパーをつける。
うん、今日なら出来る気がする。
そして極力安く直すため仕上がりはある程度の妥協をします。主な目的は割れ目を直すこととして予算は1,000円以下に設定しました。そうして用意したアイテムは以下の通り。
①ハンダごて(ホームセンターで調達、500円)
②洗濯ハンガー(バンパーと同じPP製、これで強度を上げます)
③工具セット(会社から拝借)
④フロアジャッキ(20代前半に『いつかは使う』と購入したまま新品未使用)
⑤手袋(仕事用)
⑥ブランケット
では、作業開始です。
W210のFバンパーは10個の留め具で固定されています。Fフェンダー内にあるビス、ヘッドライト脇にあるビス片側2カ所、ラジエター横のナット、フォグランプ脇のビスとなります。
フェンダー内のビス(10mm)は下から固定されています。
ヘッドライトの両脇のビス(8mm)。
ラジエター脇には13mmのナットがあります。
そして一番厄介なのがこのフォグランプ脇にあるビス。
サービスホールから手を入れるので、このネジを回してカバーを外して探して下さい(10mm)。
かなり手が入り難い場所もあるのでジャッキアップをオススメします。持っててよかったフロアジャッキ、購入から10年以上が経ってようやく出番が訪れました。本当はフロントから入れて一点で上げようと思ったけれど、純正でも車高が低くて入らないためにサイドから攻めました。
作業の安全確保のために面倒でもタイヤを車体下にかませましょう。1.5トンの車体に挟まれたら圧死します。
で、悪戦苦闘すること40分ほど、ようやくバンパーが外れてくれました。全てのビスを外してもまだフックで吊り下がっているので、上手いこと前にずらして取り外して下さい。
もうこの段階で自分を自分で褒めてあげたいです。ちなみに必ず地面には何かクッション(私の場合はブランケット)を敷いてからバンパーを外して下さい、私はこれを怠ったがためにナンバープレートに大きな傷が出来ました…。また、フォグランプと外気温センサーがバンパーに繋がっています、いきなり力任せに行くと千切れるかもしれないので気をつけて。
左がフェンダー内のビス、右がフォグランプ脇のビス。どちらも10mm
左2つがヘッドライト両脇のビス(8mm)。右がラジエター脇のナット(13mm)
バンパーが外れて感動したところでふと普段見えないところに目をやると…
バンパーのフェンダーとの合わせ目です、超絶汚い…
今までのオーナーが着脱していなければ16年分の汚れです、奇麗に拭き上げておきました。
これが問題の割れ目です。長さにして30cmくらいでしょうか、こいつをバンパーの裏側で溶接するのです。
合わせ目を密着させるために表面を養生テープで固定しました。糊の跡が残らないのでガムテープよりもこの養生テープが良いです。
期間限定で安売りしていたハンダごて、500円也。いい仕事してくれよと心で祈って開封の儀。
接着剤代わりとなるPP製ハンガー。その他で洗面器やタッパーなどもPP製が多いですが、このハンガーが一番お手軽かつお値打ちだと思います。
こんな感じで溶けるのです。大体10秒程で良い具合に溶けます、バンパーはハンガーと比べて薄いからもっと早くに表面が溶け始めます。あまり溶かしすぎると裏面のみならず表面まで溶けかねないですので攻め過ぎないように気をつけて作業して下さい。またPPが溶けるとかなり強い臭いがします、もちろん有毒ですから吸い込まないよう、そして周囲にも気を配っての作業をお願いします。
盛り付けはかなり汚いですが…まあ見えない部分だし、何より手で押し曲げしてみても割れませんでした。上手く溶接出来たみたいで補修としては成功です。
表面はさすがに溶かすわけに行かないですからマスキングした上でタッチアップして誤摩化しました。あくまでも遠目で見て分からなければOKな基準での補修ですから。
ここまで終わればバンパーを再び装着して終わりとなります。しっかりとビスを締めるのは大事ですが、ヘッドライト両脇に関しては受け側も樹脂製であまり強くなさそうです。無理に締め上げると破損しそうなため程々にして下さい。
完成です、塗装が欠損してしまった箇所は仕方ないとしても仕上がりとしては悪くないのでは?
タッチアップをもっと自然に仕上げたければ薄め液などでグラデーションを付けると目立たなくなります。私は低予算での完成にこだわったからこれで今回は良しとしました。
作業開始から小休憩を入れても3時間程で補修完了しました。工場に入れれば完璧な出来になるのはもちろんですが、素人レベルでもこれくらいには出来ると言うことが伝わったとすれば幸いです。但し、あくまでも自己責任での作業と言うことと周囲と安全には十分に配慮した上でトライしてみて下さいね。
あ、どうやら私は外気温センサーをうっかり触ってしまったらしくメーター内の表示が−38.0℃になってしまいました…これはまた改めて直します。
おしまい。