40代の日々徒然

ほのぼの夫婦と保護猫2匹の備忘録

【PORSCHE】 718ケイマンの虜になる

 私が『ポルシェ』と言うクルマを初めて目にしたのは恐らくまだ幼稚園児だった頃の話。当時は『ガイシャ』なんてどこぞの大金持ちが乗るような遠い存在だったのだと思いますが、我が家の三菱ラムダで中央道の上り坂を一生懸命上っているときに父親が『あ、ポルシェだ!!』と追い越し車線を猛スピードで抜き去って行く、地面にペッタリと張り付いたカエルのようなフォルムのクルマを指差し興奮気味に教えてくれたのを今でも鮮明に覚えています。

 私は定期的にポルシェが猛烈に欲しくなる時期があります。誰が見てもひと目で分かる姿を昔から守り続けている個性が極めて強いクルマであることはもちろんのこと、それに乗っているオーナーさんの顔が明らかに幸せそうに見えるのです。きっと欲しくて欲しくて手に入れた自慢の愛車に違いない、そんなハッピーオーラが溢れているエンスー好きなモデルに私も強い憧れだけは持ち続けていたりします。今までの私のクルマライフにおいても、あと一歩で購入するところまでは踏み込んだものの、最後の最後で実用性を取ったり価格が見合わずに断念したユニコーンのようなクルマなのです。

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そんなこんなでどれだけ振りかでポルシェセンター(PC)へ気がつけば足を運んでいました。私が昔から欲しい欲しいと思い続けているモデルはケイマンというミッドシップタイプのポルシェです。初代モデルである987には私がまだR34スカイラインGT−Rに乗っていた頃に試乗させていただいたことがありまして、それ以来の訪問となります。特に事前に電話などは入れていなかったのですが、幸いにも午前中のPCはあまり混んでいなかったためにセールスさんのエスコートで無事に店内へ。基本的に外車のディーラーは国産車のそれのようにセールスさんが大勢スタンバイしているわけではないので、運悪く大賑わいの中に一見さんで飛び込むと華麗なまでに放置プレイされることもあるため、本来であれば電話を一本入れておけばスマートなんですけどね。

 『見積りとカタログが欲しい』旨を伝えると、まずは試乗して体感してくださいと嬉しい提案をいただきました。二つ返事で試乗を申し込みましてやって来た試乗車はグレーのケイマン、嗚呼なんてカッコいいんだろうと早くも溶けそうです。しかし本当に久しぶりのスポーツカー、平静を装っていましたが実は結構ビビってしまった小心者一般市民独身です。地を這うように低いフロアシートに座ると言うよりは潜り込みエンジンスタート。ポルシェはプッシュスタートではなくてイグニッションキーを捻るスタイルを貫いていまして、それだけでも心躍ります。爆音…とまでは行かないものの元気の良いサウンドでエンジンが目を覚まし、ほんの若干乾き気味のバラバラとしたエンジンサウンドで私はすっかり溶けきりました。

 そうだ、スポーツカーってこんなにワクワクするんだったっけ。

 ボルボメルセデスライフですっかり丸くなっていた自分でしたが、若かりし20代の頃のようにスポーツカーへの憧れが鮮明に戻って来ました。ハンドルは極めてクイックで遊びが無く、またアクセルとブレーキもレスポンス上々です。仕事柄、公道では以前にも増して安全運転に努めていますから法廷速度以上を試すことはありませんが、それでもスポーツモード、スポーツプラスまで試しましたよ。PDKモデルでクロノパッケージを選べばこの楽しさが味わえるのですね、でも私はMTが欲しいです。

 PCへ戻ってからは見積りの作成をパソコン画面で行いました。モデル、カラーを選んでからオプションを追加して行く作業でしてオプションなどは200通りほど存在するのだとか。ほとんどオーダーメイドと言っても言い過ぎではありません。私の場合はMTのケイマンでボディカラーは追加料金無し、インテリアにレザーパッケージ、あとはアルミペダル、シートヒーターを付けたくらいで総額は¥7,000,000を少し超えるくらいになりました。本当は『マイアミブルー』と言うボディカラーが魅力なのだけれども¥400,000以上の追加となるため今回の見積りではパス。

 ちなみに見積り金額は先日のBMW5シリーズやメルセデスEクラスとかなり似ています。2シーターで荷物もろくに積めないようなクルマに同額を突っ込めるかと聞かれれば、YESと答えられる方は限られてくるかと思います。ライフスタイル、環境、家族からの理解など乗り越える壁は高いはず。ただ、決定的に違ってくるのはリセールバリューだとセールスさんが教えてくれました。PCは認定中古車を販売しています。これはポルシェが一定条件以上の下取り車を徹底的にメンテナンスして再び世に送り出すものでして、基本条件が『前オーナーが全てPCでメンテナンス、車検を行っていること』なのだとか。整備記録は整備手帳に全て記載され、それは本国へも同時に登録がかかっているんですって。で、その記録簿を万が一無くしても再発行は出来ず、下取り時に80万ほどダウンするらしいです。また、ポルシェと言うクルマは基本的にスポーツカーでしてメーカーが徹底的にバランスを計算して作られているために、下手に社外品を装着するとバランスが崩れてパワーダウンするなんて驚きの事実も教えていただけました。もちろん改造すれば認定中古車の候補からは外されて下取り額も大幅ダウンとなります。要するに新車で購入して全てPCで整備さえすれば、下取り時にも安心の額を提示いただけるって寸法ですね。ザックリとした金額も正直に語っていただけました。ただこれはこちらでは割愛しますため、気になればPCでお伺い下さいませ。

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以前だとボクスターが一番価格帯の低い車種でしたが、今は逆にケイマンが一番低くなっています。これは718シリーズになってからボクスターとケイマンが全く同じグレードとなったために、単純に屋根が開くボクスターが高い金額設定となったためです。911でもカブリオレの方がハードトップよりも高額なのと同じ理由であります。
また、MTとPDKの比率はおよそ1:9ほどでほとんどがPDK仕様となります。ドイツ車は本来はLHDであり、RHDはペダルの位置がタイヤハウスに干渉してしまうので中央寄りになりがちなのですが、718に関しましてはそれほど気になりませんでした。これは987と比べて全幅が広がったため単純にフロア空間が生まれたことによるものです。そして気になる納期について、まず国内にケイマンの在庫自体がほとんどゼロです。そのため発注してから最低でも6ヶ月程度は要する上、今からだと恐らくMY2018モデルが割り当てられる予想となっています。詳細は不明としながらも、もしかするとナビのネット接続機能の拡充やエンジン性能(馬力)の若干のアップが見込まれておりまして、そうなると本体価格も必然的に上がってしまいそうです。

 と、良い話ばかり書いていますが、もちろんネガティブサイドの事だって見えてくるわけです。まずは当たり前ながら実用性はゼロに近いです。価格と比較したとき内装パーツの作り込みに満足度はあまり無いでしょう。タイヤは太い上にポルシェ指定があるためとんでもなく高額です、メルセデスなどのそれと比べれば本当に素っ気ない室内です。また、ほとんどの物がオプション設定になっているためフロアマットですら追加料金が発生します。オイルは定期的に減ってくるらしく継ぎ足しが必要です。構造上シートはリクライニングしません。でも最低でも¥7,000,000もするんです。これらを笑顔で克服出来る猛者こそがポルシェに乗る資格があるわけなのですよ。

 こぼれ話として、実はなんと装着されてくるタイヤは国内に入ってくるまで分からないし、もちろん選ぶことも出来ないと驚愕の事実が…。
ミシュランブリヂストン、コンチネンタルあたりが標準的ながらも、以前はハンコックが装着されたものも存在してオーナーからクレームになったそうです。ハンコックは韓国のメーカーで母体はたしかアシアナグループです。GT300でもハンコックポルシェなんてチームがありまして、近年では性能も他メーカーと肩を並べているものの、やはりレースなどに詳しくなかったりしますと『アジアタイヤ』のレッテルが前面に出てしまって『1,000万もするクルマにこのタイヤ!?』と言われたわけでして…。今はハンコックは使用していないようです。
 それと車両保険についても訊ねてみました。等級さえマックス近く行っていれば思いの外、現実的な価格で三井の保険に加入出来まして、またポルシェ専用のコールセンターがあり手厚いサービスを受けられるみたいです。上に書いたリセールなどと合わせて考えて行けば、高嶺の花のポルシェも少しは現実味を帯びて来ませんか?

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カーゴスペースは非常に限られています。ボンネット内とリアハッチに少々と言ったところです、尤もこの手のクルマにそこまでの実用性を求めることもありませんが…。
試乗から始まって見積りや雑談で2時間近くもPCで時間を過ごしました。逆に言えば、それだけの情報量をセールスさんはユーザーに対して事細かに説明してくれるのです。エントリーグレードでも下手すれば国産車を複数台買えてしまう金額なので当然と言えば当然ながらも、流石はプロだと感心した次第であります。社員さんはサーキットなどでプロの指導の元で研修を受けることがありまして、走行性能に関してもかなりの知識を持ってみえます。下手に知ったかぶると恥ずかしい目に遭いますね。

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…と言うわけで私の目の前にはハードカバーのカタログが鎮座しております。試乗して、色々なお話を聞いて、カタログをめくりながらメタルスライムのように溶けきった自分がここに居ます。かろうじて見積り金額で現実に足蹴りされながら押し戻されつつありますが、それでもライフスタイルを見据えた上で頑張って頑張って頑張れば一般サラリーマンにでも決して夢物語ではない世界のお話です。

おしまい。