40代の日々徒然

ほのぼの夫婦と保護猫2匹の備忘録

【Porsche】ポルシェの思ひ出

 スポーツカー好きであればいくつもの夢を抱くモノですよね?
先日のエントリーでも綴った『いつかはフェラーリ』の様に『いつかはポルシェ』もまた然り。自動車免許取得して23年目になる私の車人生において、ポルシェは常に『あと一歩で選択肢に入る』存在でした。

 私が『ポルシェ』と言う名のクルマを初めて知ったのは、私と同じくらいクルマが好きな父からでした。私がまだ小学生になるかどうかって幼き頃のある休日の晴れた朝、親父殿がご機嫌にハンドルを握る三菱ラムダに乗って家族旅行での道中でのこと。荒井由実流に言えば中央フリーウェイを信州へ向けて走らせていると遥か後方から空冷サウンドをバサバサさせて文字通り『ものすごい勢いで』私たちのラムダを抜き去ったシルバーの丸みを帯びたクルマこそがポルシェだったのです。起伏の激しい中央道を地面に吸い付くかの様に滑走する姿はあまりに鮮烈であり、当時の少年Aこと私はひどく興奮したのを覚えています。

 ポルシェとのセカンドコンタクトは私が大学を卒業して、新卒入社した会社であります。社長はW140メルツェデスSクラスと、964ポルシェのターボルックカブリオレに乗っていて、会社の管理部所属だった私は同時に社長のアッシーでもありました。駐車場の関係から1台は会社所有の倉庫で保管していたことで定期的に車両の入れ替えを命じられて、当時22歳ながらもその度にポルシェを運転していたのです。
ただ、この時に感じた事はポルシェってぇのは車内がかなり狭いんだなって点と、ハンドルは重いしターボルックでリアのフェンダーがドアミラーの視界一杯に広がっていて、とにかく運転に気を遣うクルマだってくらい。まあ言っても社長のクルマなので万が一にも傷なんて付けた日にゃあ切腹モノですし(笑)
あと、その車両はティプトロだったからか想像していた程の瞬発力が無くて、また車内は常にどことなくガソリン臭く、アイドリングも安定していなくて正直あまり良いイメージが無かった訳で…。

 そしてサードコンタクトは24歳くらいの頃かな?
987ケイマンがどうにもステキに見えてしまい、恐れ多くも正規ディーラーへカタログを貰いに行ったのでした。その際にダンディな営業主任さんが「よければ乗ってみる?」と気前良くキーを渡してくれて、まさかの同乗無しのソロドライブをさせてくれましてね。「30分くらい好きに走って来なよ」と私を自由に泳がせてくれました。
964とは対照的に至極運転しやすいし、水冷になったとは言えリアから聞こえるボクサーエンジンサウンドには心底惚れました。この987シリーズって今となってはそこまであか抜けたデザインでは無くてどちらかと言えばクラシカル、かつ角度によってはちょっと不細工な一面もありますけど、未だにペリドットメタリックのケイマンRやボクスタースパイダーを見ると良いなって感じますね。

 それからも毎年の如くポルシェとの接近はあったものの、41歳の現在まで赤い糸で結ばれる事はありませんでした。アルファロメオ4Cを購入した際もショップで981ボクスターSがご機嫌なサウンドで暖気していて瞬間的にはビビビッと来たけれども4Cの前では決定打に欠けていましたし、718ケイマンにも試乗させてもらいましたがボディのデザインがクリーンで(逆に4Cがあまりに独特過ぎて)リプレイスに至っていません。
ポルシェ70周年の年にはドイツのミュージアムにも行きましたし、もちろん憧れの対象としては今も色褪せません。ポルシェ社の哲学的な部分も大好きです。

 そして何より、今日のポルシェ市場は高価になり過ぎてしまって私の小さな手からは少しずつ離れてしまったのが正直なところ。10年ちょっと前までは964とか993はまだ400万円台でも手に入る時代でした。ちょっと変わったモデルで言えばシュトロゼックやフラットノーズだってつま先まで背伸びすれば手が届く価格でショップに並んでいましたし、そんな今みたいに素の964が1,000万オーバーになるなんて誰が想像出来たでしょうか。1,000万なんて言えば一昔前は役物ポルシェやRUFが狙える予算でしたからねぇ。

昨日は久々に964を間近でじっくりと眺める機会に恵まれました。
992シリーズの車格が4,519mm x 1,852mm x 1,300mm / 1,515kgに対して964シリーズは4,245mm x 1,660mm x 1,310mm / 1,350kg。全幅に20cm程度の差が生じている辺りを見てもいかに911が肥大化したかが見て取れます。例えば街中に溢れるトヨタのアクアなんてコンパクトカーでも全幅が1,695mmありまして実は964よりワイドボディなのです。ちなみにですがユーノスロードスターは3,970mm x 1,675mm x 1,235mm / 940kg、964よりもワイドでローでライトウェイトってビックリしました。


実際に向き合って展示されていた992と964を見ると目の錯覚でも起きているくらいにサイズが大きく異なって見えました。

ただ逆に964は小柄ながらも繊細さと重厚感を兼ね備えたデザイン、間延びしていなくてどの角度から眺めても全てが黄金比かと思えるくらい完璧であり、現行モデルと比較して異様なまでに低い位置に収まる横一文字のテールランプとガーニッシュが私の心の柔らかい場所を締め付けます。あ、このフレーズはフェラーリでも使ったか(笑)

でも現実的に見れば私が空冷ポルシェを持つ事はこの先も無いだろうなと。もちろん価格面であまりに相場が上がり過ぎたのが一番だけど、ユーノスロードスターと同じく世代としてはクラシック。当時のクルマと比較すればエンジンスペック、ボディ剛性や装備などで優れていたとしてもそれから30年が経った2023年では一般大衆車と大差無い、下手すればワンボックスに煽り倒される老戦士なのは否めないし、何より経年劣化から常に予期せぬ車両トラブルの不安を抱えながらのツーリングもストレスになるでしょう。そうなれば水冷にシフトしてからのポルシェがどれほど快適な事か…と現実的になるでしょう。とは言え997カレラや981ボクスターなどでも値上がり傾向にあるし、新車価格は目玉が勢い良く飛び出したまま戻ってきません。

 クルマ好きとして日産のRBエンジンはBNR34で若くして堪能しました。スバルのボクサーエンジンも最終型を所有しました。メルツェデスは自身でW210、実家がR126&W211を味わいました。今は情熱のアルファロメオを楽しみながら小型2人乗りオープンカーとしては世界一売れたユーノスロードスターも活躍しています。人生どこでどう転ぶか分からないけれど、免許を返納するまでの残りおよそ35年前後の間にポルポル君や前回エントリーのフェラーリも、たとえ短期間であっても所有してみて、自分が禿げあがったシワだらけの老人になる頃には「ワシも昔はクルマで道楽してのぅ」と公園のベンチに腰かけてゲートボール仲間とウンチクを垂れる余生を送りたいものです。


おしまい。